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日本酒の製造工程

次に日本酒(清酒)の製造工程についてご説明します。

日本酒(清酒)の原料は法律で定められていることは、先のページで説明させていただきました。
米、米こうじ、水が主たる原料なのですが、米と水とこうじ菌だけでどうやって、作り出すのでしょうか?
しかも、その製造方法は長年にわたって伝えられてきたのだというのだから、よほど合理的な製造方法
なのでしょうね。

さて、ここからは日本酒(清酒)について掘り下げてゆきます。ところどころで重要な単語が出てきますので、
それぞれの章の終りに、その重要単語(キーワード)を書き出しておきますね。
みなさんが、お店で日本酒を選ばれる際の参考にして下さい。

清酒の製造工程について

日本酒(清酒)の製造工程

日本酒(清酒)の製造工程は、簡単に説明しますと、ざっと以下の工程になります。

1.原料処理工程
2.醗酵工程
3.圧搾工程
4.貯蔵工程
5.瓶詰工程

では、それぞれの工程について、少し掘り下げてみましょう。

清酒の製造工程(原料処理)

1.原料処理工程

1-1)精米・・・ 玄米を削って白米にする作業です。もともと米(玄米)の表面には酒づくりに
適さない脂質やタンパク質があるため、それを削ることによって取り除く作業です。
玄米を削った割合(精米前の玄米の重さと精米後の白米の重さの割合)を
精米歩合と呼び、この割合によって日本酒(清酒)のさらに細かい名称が変わります。
ちなみに、玄米を削った後に発生するのが糠(ぬか)で、玄米の外側から順に
赤糠(あかぬか)、白糠(しろぬか)、上白糠(じょうしろぬか)と呼ばれており、
赤糠は飼料に、白糠、上白糠は煎餅(せんべい)の原料に使われることがあります。
このあたりも合理的ですね。
1-2)洗米・・・ (せんまい)と読みます。精米後の白米を水で洗う作業です。
精米時に白米の表面に付着した糠を取り除きます。
1-3)浸漬・・・ (しんせき)と読みます。洗米後の白米に水分を含ませる作業です。
白米がもともと持っている水分量や、精米歩合によって漬ける時間は
変わってきます。
1-4)蒸米・・・ (じょうまい)と読みます。字のごとく米を蒸す作業です。
浸漬した白米を、蒸米機で蒸します。麹菌の繁殖を良くし、酵素の働きを
助けるのが目的です。

ここまでの工程を振り返って、みなさん何かお気づきになられましたか?
精米(お米を削って)、洗米(お米を洗って)、浸漬(お米を水に漬けて)、蒸米(お米を蒸す)
私達が普段、お米を食べるときの工程に似てますよね。最後の蒸すという作業が、炊くという
作業の違いがありますが、ほとんど一緒ですよね?
ちなみに、私達が食べるお米の精米歩合は約90%程度ですが、お酒に使うお米の精米歩合は
70%から40%です。
随分とお米を削っているわけですね。
 
ちょっと脇道にそれましたが、次の工程に移ります。

キーワード・・・精米歩合(せいまいぶあい)

清酒の製造工程(醗酵工程)

2.醗酵工程

2-1)製麹・・・ (せいきく)と読みます。蒸米後の米は、そのまま仕込み用に使う
掛米(かけまい)と麹菌を生やした麹米(こうじまい)とに分けられます。
製麹とは、この麹米を作る作業です。
30℃から40℃の温度の中で麹菌を繁殖させます。また湿度も高いので、
昔は麹室(こうじむろ)と呼ばれるせまい部屋の中で作業するのは
とても大変な作業だったのです。
現在は製麹機と呼ばれる機械の中で麹米を作っているのがほとんどです。
2-2)酒母・・・ (しゅぼ)と読みます。「もと」とも呼ばれ、掛米、麹米、水を
桶(おけ)あるいはタンクに混ぜ合わせて、醗酵に必要な酵母を培養させます。
醗酵の最初の工程ですが、後の酒質を左右するものなので、
酒母造りは基本中の基本の重要な工程です。
2-3)醪 ・・・ (もろみ)と読みます。酒母が出来た後に、水と麹米と蒸米を3回に分けて
酒母に加えてゆきます。3回に分けて加える仕込み作業を
三段仕込み(さんだんじこみ)といいます。

さて、ここで酒母(しゅぼ)やもとという言葉が出てきましたので、もう少し掘り下げて説明しますね。

酒母が酒造りの基本となることは説明しましたが、この酒母には、「生もと系酒母」と「速醸系酒母」が
あります。醗酵に重要な役割をする酵母を増殖させるため、乳酸(にゅうさん)がとても重要な役割を
担います。
自然の力を借りてじっくり乳酸菌から乳酸作り出すのが「生もと系酒母」で、とても時間と
手間のかかる造り方です。
これに対し、最初から乳酸をいれるのが「速醸系酒母」で、現在ほとんどの日本酒は
この「速醸系酒母」から出来ています。

乳酸が好む環境というのはとても低温環境なので、人間にとってはとても厳しい環境です。
「生もと」造りの作業の中で、蒸米と麹と水を半切り(はんぎり)という桶に入れ、
櫂棒(かいぼう)とよばれる棒で、半切りの中のもとを混ぜる作業を「もとすり」と呼び、
寒風(山卸)が吹く、とても寒い冬の時期に行うので、「山卸(やまおろし)」とも
呼ばれています。
とても過酷な作業であり、とても手間のかかる作業なのですが、明治時代に、
この「山卸」をせずに酒母を造る手法が確立されました。
それに伴い「山卸」の作業が廃止されるようになりました。
「生もと系酒母」の中で、この「山卸」をせずに造られる酒母を「山廃(やまはい)」と呼びます。

キーワード・・・生もと(きもと)、山廃(やまはい)

また、醪(もろみ)についても、少し掘り下げて説明します。

醪(もろみ)を3段階に分けて仕込むこと(三段仕込み)は先ほど説明しましたが、この3段階の作業を、
初添え(はつぞえ)
仲添え(なかぞえ)
留添え(とめぞえ)
と呼び、それぞれ略して、添(そえ)、仲(なか)、留(とめ)と呼びます。
それぞれ1日単位の作業となり、水、麹米、蒸米を加えてゆきます。合計3日間かかる作業なのですが、
添(そえ)と仲(なか)の間に1日休息をとるので、4日間の作業となります。
この休息をとる行為を踊り(おどり)と呼びます。
留(とめ)の後、約20日間ほどかけて、10度から15度前後の低温でゆっくり醗酵させてゆきます。
仕込みの最終段階に醸造用アルコールを加えることがあります。また、蒸米を加工して抽出した甘味成分を
加えることにより、辛すぎになることを補正する場合があります。
通常の三段仕込みに甘味成分を加えることにより四段仕込みと呼びます。

キーワード・・・三段仕込み(さんだんじこみ)、四段仕込み(よだんじこみ)